タネ袋は裏から読みます🌱 「フィルムコート」の意味、知っていますか
🗨️「タネ袋って、絵を見て選んでる」
🗨️「フィルムコートって、なんか良さそうな響き」
🗨️「去年の余った種、捨てたほうがいいのかな」
どうも、8150(えいこう)です🌱 家庭菜園歴8年、理科の教員免許を持っていて、有機・無農薬で野菜を育てています。
1月は、タネを買う月です。
畑の作業は少ないのに、ホームセンターにはもう春夏野菜のタネが並びはじめます。ここで何を選ぶかで、春からの半年が決まります。
でも、選び方を教わったことって、ないですよね。
先に、この記事でいちばん言いたいことを言っておきます。
★タネ袋は、裏から読んでください。
表に書いてあるのは、品種名と、おいしそうな写真だけです。あなたが知りたいことは、全部裏に書いてあります☺️
📖 この記事の目次
表には、ほとんど情報がない
表で分かるのは「何の野菜か」だけ
タネ袋の表には、だいたいこの3つが載っています。
- 野菜の名前と品種名
- 育った状態の写真
- キャッチコピー(「甘い」「作りやすい」など)
このうち、栽培に効いてくる情報はひとつもありません。
写真はいちばん出来のいい株を撮ったものですし、キャッチコピーはメーカーが自分で書いたものです。「作りやすい」と書いてあっても、それがあなたの畑で作りやすいかどうかは別の話です。
裏には、守るべき数字が並んでいる
裏を見てください。小さい字で、こんなことが書いてあります。
- 発芽適温
- 生育適温
- まきどき(地域別のカレンダー)
- 有効期限
- 発芽率
- 種子加工の表示
この6つが、そのタネの取扱説明書です。
私は最初の年、これを一度も読まずに育てていました。芽が出ないたびに「土が悪いのかな」「水が足りないのかな」と畑をいじっていたのですが、原因はまく時期が2か月ずれていただけでした。袋の裏に、ちゃんと書いてありました。
①発芽適温 ── いちばん大事な数字
「気温」ではなく「地温」の話
前回の記事でもお話ししましたが、大事なのでもう一度書きます。
★タネ袋の「発芽適温」は、気温ではなく地温です。
空気が20℃でも、土の中はまだ12℃ということがあります。土は水を含んでいるので、温まるのが遅いんです。タネがいるのは土の中なので、タネにとっての世界は12℃のほうです。
だから、暖かくなってきたのに芽が出ないときは、まだ土が冷たいのだと思ってください。
レタスは、暑いと寝てしまう
面白い例をひとつ。
レタスの発芽適温は20℃前後です。そして★25℃を超えると、タネは休眠したまま芽を出しません。
「暑いほうが早く出そう」と思いますよね。逆なんです。レタスにとって25℃以上は「まだ夏だ、出たら焼け死ぬ」という合図なので、タネのほうが待つことを選びます。
そして18℃前後まで下がると、ようやく起きてきます。
これは意地悪ではなくて、レタスがもともと涼しい土地の野菜だからです。野菜には出身地があって、タネはその記憶を持っています。
水は、いつもの倍の感覚で
発芽までのあいだ、水やりは★普段の倍の感覚でまいてください。
表面がうっすら乾いた時点で、タネのまわりはもう乾いています。人間の目には「まだ湿ってる」ように見えても、タネの側は干からびはじめている。芽が出ない原因の多くは、これです。
芽が出るまでは、乾かさない。出てからは、少しずつ減らす。この順番です。
②有効期限と発芽率 ── 期限は「未開封」の話
2つの数字はセットで見る
裏には、こう書いてあります。
- 有効期限:2027年◯月
- 発芽率:80%以上
この2つはセットです。「この期限までなら、80%以上は芽が出ますよ」という意味になります。
100%ではありません。10粒まいたら2粒は出ない。それが正常です。だから★タネは少し多めにまくのが前提になっています。
ただし、開けたら期限は関係なくなる
ここが落とし穴です。
★有効期限は、未開封のときの話です。
一度開けたタネ袋は、空気中の湿気を吸います。タネは乾いた状態で眠っているので、湿気が入ると呼吸が始まり、少しずつ体力を使っていきます。袋を輪ゴムで留めて棚に置いておくだけでは、期限まで持ちません。
余った種は、1年はもつ
では捨てるのかというと、そんなことはありません。
私の実感では、★1年は普通に使えます。去年の秋に余ったタネを、今年の秋にまいて、ちゃんと育ちました。発芽率は少し落ちるので、いつもより気持ち多めにまけば十分です。
保存のコツは3つです。
- お菓子に入っている乾燥剤を一緒に入れる
- 密閉する(チャック付きの袋か、フタつきの瓶)
- 冷蔵庫の野菜室に置く
暗くて、乾いていて、寒い。タネにとっては「まだ冬が続いている」状態なので、目を覚ましません。
葉物の残り種は、まとめて使い切れる
小松菜、水菜、春菊、ほうれん草。葉物のタネって、少しずつ余りますよね。
これらの発芽適温は、どれも15〜25℃くらいでほぼ同じです。★30℃を下回れば、だいたい発芽してくれます。
つまり、秋に葉物のタネをまとめてまいてしまえば、全部使い切れます。私は種類ごとに区画を分けてまいています。混ぜてまくと収穫のとき見分けがつかなくて、これは一度やって困りました。
③種子加工 ── ★ここがいちばん知られていない
聞き慣れない言葉は、全部「加工の種類」
タネ袋にこんな言葉を見たことはありませんか。
- コート種子
- フィルムコート種子
- ネイキッド種子
- プライミング種子
かっこいい響きなので、なんとなく「良さそう」と思って選んでしまいがちです。でもこれは品質の等級ではなく、★どんな加工をしたかを表しているだけです。
ひとつずつ見ていきます。
生種(きだね)── そのままのタネ
何も加工していない、裸のタネです。いちばん安く、いちばん自然です。
小さすぎて扱いにくい種類もありますが、基本はこれで問題ありません。
コート種子 ── 粘土で丸めてある
タネを★粘土で包んで、丸く大きくしたものです。
にんじんやねぎのタネはとても小さくて、指でつまむと落としてしまいます。丸く大きくしてあれば、1粒ずつ置いていける。まき間違いが減って、間引きの手間が減ります。
粘土なので、無農薬でも問題ありません。
★フィルムコート種子 ── 殺菌剤がまぶしてある
ここが今日いちばんお伝えしたいところです。
「フィルム」「コート」と聞くと、きれいに膜がかかった高級品のように思えます。私も最初はそう思っていました。
違います。
★フィルムコート種子とは、殺菌剤をまぶしてあるという意味です。
タネの表面についた病原菌を殺して、まいた直後に腐るのを防ぐための加工です。農業としては合理的なやり方ですし、危険なものではありません。
ただ、★無農薬でやると決めているなら、これは選ばないほうがいい。
畑には農薬を1滴も入れていないのに、スタート地点のタネに薬がついている。それでは筋が通りません。袋の裏に「フィルムコート」「消毒済み」「種子消毒」と書いてあったら、別のものを探してください。
ネイキッド種子 ── ★ほうれん草はこれを選ぶ
ほうれん草のタネには、かたい殻がついています。この殻が水を通しにくいので、ほうれん草は発芽が揃いにくい野菜です。
ネイキッド種子は、その★殻を取り除いてあるタネです。裸、という意味ですね。
殻がないぶん水がすぐ入るので、発芽が早く、そろいます。ほうれん草で苦労した経験があるなら、これを試してみてください。私はこれに変えてから、ほうれん草の「まばらに生える」問題がほとんどなくなりました。
プライミング種子 ── 発芽の一歩手前で止めてある
いちばん手のこんだ加工です。
タネにあらかじめ水を吸わせて、★発芽する直前の状態まで進めてから、乾かして止めてあるもの。走り出す構えを取ったまま、静止しているようなイメージです。
まくとすぐ動き出すので、発芽が早く、そろいます。そのぶん値段は上がりますし、長期保存には向きません。買ったシーズンに使い切る前提のタネです。
じゃあ、何を買えばいいのか
私の選び方
迷ったら、この順でいいと思います。
- 基本は生種でいい(安いし、いちばん自然)
- タネが小さくて扱いにくいものはコート種子(にんじん・ねぎ)
- ほうれん草だけはネイキッド種子
- 「フィルムコート」「消毒済み」は、無農薬なら避ける
- プライミングは、どうしても揃えたいときの選択肢
固定種とF1、どちらでもいい
もうひとつよく聞かれるのが、固定種とF1です。
- 固定種:昔からある品種。自分でタネを採って、来年もまける
- F1:かけ合わせて作った一代限りの品種。育ちが揃って、病気に強いものが多い
どちらが正しいということはありません。タネを自分で採ってつないでいきたいなら固定種、まずは失敗を減らしたいならF1。目的が違うだけです。
私は両方使っています。かぶや小松菜は固定種でタネを採り、トマトやきゅうりはF1を買っています。
今日から、袋を裏返してみる
タネ袋の裏を読めるようになると、ホームセンターの棚がぜんぜん違って見えます。
「これは殺菌剤つきだから外そう」
「発芽適温20℃か、じゃあ3月末だな」
「有効期限が来年の春? 今年使い切ろう」
こういう判断が、その場でできるようになります。
この記事の要点
- ★タネ袋は裏から読む。表には品種名と写真しかない
- 裏の6項目=発芽適温/生育適温/まきどき/有効期限/発芽率/加工表示
- ★発芽適温は気温ではなく地温。レタスは25℃以上だと寝たまま
- 水やりは発芽まで★いつもの倍の感覚で
- 有効期限は★未開封の話。開けたら乾燥剤+密閉+野菜室へ
- ★余ったタネは1年はもつ。葉物はまとめてまき切れる
- ★フィルムコート種子=殺菌剤つき。無農薬なら選ばない
- コート種子は粘土なので問題なし。★ほうれん草はネイキッド種子
全部やろうとしなくて大丈夫です。まずは家にあるタネ袋を1つ、裏返してみてください。発芽適温の数字が見つかったら、それが第一歩です🌱
次回は、2月の作業の話。冬のあいだにやっておくと春が楽になることを、月ごとにまとめてお話しします🌱
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
レタスのタネ
この記事に出てくる「25℃以上だと休眠する」を、実際に確かめられるタネです。夏にまくと出てきません。18℃前後まで下がると、待っていたように芽を出します。タネ袋の裏の発芽適温を見比べてみてください。
ほうれん草のタネ
ほうれん草はかたい殻に守られていて、発芽が揃いにくい野菜です。もし苦労した経験があるなら、袋の裏に「ネイキッド」と書いてあるものを探してみてください。殻を取ってあるぶん水がすぐ入ります。
小松菜のタネ(固定種)
いちばん失敗しにくい野菜です。そして固定種なので、自分でタネを採って来年もまけます。買ったタネを1年で使い切る前提のF1とは、そこが違います。どちらが正しいということはなく、目的が違うだけです。
乾燥剤(シリカゲル)
有効期限は未開封のときの話です。一度開けた袋は湿気を吸って、タネが少しずつ体力を使っていきます。乾燥剤を一緒に入れておけば、開けたあとでも1年は普通に使えます。
チャック付き保存袋
乾燥剤と一緒に、これに入れて冷蔵庫の野菜室へ。暗くて、乾いていて、寒い。タネにとっては「まだ冬が続いている」状態なので、目を覚ましません。輪ゴムで留めただけの袋は、湿気を吸います。


