ぼかし肥料の作り方|配合例・水分の目安・温度と切り返し・完成の見分け方
どうも、8150(えいこう)です🌱 家庭菜園歴8年、理科の教員免許を持っていて、有機・無農薬で野菜を育てています。
この記事で分かること
- ぼかし肥料は、米ぬかなどの有機物を、畑に入れる前に発酵させておいた肥料です。
- 生の米ぬかや油かすをそのまま土に入れると、分解のときにガスや熱が出たり、虫が寄ってきたりします。先に発酵させておけば、その手間を畑の外ですませられます。
- 材料は、米ぬかが中心。そこに、たんぱく質の多いもの(油かす・魚粉・おから)と、薄める役の土を合わせるのが基本の形です。
- 水分の目安は「握ると固まり、指でつつくと崩れる」くらい。多すぎるより、少なめのほうが失敗しにくいです。
- 作り方には、空気を入れて混ぜる「好気(こうき)」と、袋を閉じて空気を断つ「嫌気(けんき)」の2つがあります。途中の手入れがまったく違うので、最初にどちらで作るか決めます。
- できあがりは日数で決めず、熱が冷めて、さらさらになって、いやなにおいがしないかで見ます。
- 完成したぼかしはよく効くので、最初は少なめに使って、野菜のようすを見ながら足します。
米ぬかって、精米所に行けば手に入るし、ホームセンターでも安く売っていますよね。でも「そのまま畑にまいていいの?」「ぼかしって言葉は聞くけど、なんだか難しそう」と迷っている方も多いと思います。
安心してください。ぼかし肥料は、材料を混ぜて、水を加えて、ようすを見ながら待つだけです。特別な道具もいりません。ただ、水の量と、作り方の方式だけは、最初に押さえておかないと失敗しやすいんです。
この記事では、材料選びから、仕込み、途中の手入れ、できあがりの見分け方、畑での使い方まで、順番に書いていきます。説明する人によって数字が違うところもあるので、そこは並べて比べました。
早見:ぼかし肥料の基本(ひと目で分かる目安)
材料の役割
- 米ぬか:中心になる材料。微生物のえさになり、肥料の成分も持っています。
- 油かす・魚粉・おから:たんぱく質の多い材料。発酵の進みを助け、肥料としての力を足します。
- 土(赤土・山土・培養土):全体を薄める役。においや成分が逃げるのをおさえる、という説明もあります。入れない作り方もあります。
- もみ殻くん炭:入れる人もいれば、入れない人もいます。必須ではありません。
- 卵の殻(よく洗って乾かし、細かくしたもの):入れる配合もあります。
- 水:発酵を始めるのに必要。量がいちばん大事です。
- 木酢液(もくさくえき):入れるなら、ほんの少し。入れすぎると逆効果という注意があります。
配合の例(どれか1つを選ぶ)
- 家庭で少量作る例:米ぬか3L、油かす1L、卵の殻の石灰100cc、土のかわりの培養土1Lくらい
- 米ぬかと生おからで作る例:米ぬか6に対して、生おから4。もみ殻くん炭はお好みで少し
- 魚粉を使う例:米ぬか5、魚粉2、赤土2、もみ殻くん炭1
- 乳酸発酵(嫌気)の例:米ぬか7に、よく乾かしたコーヒーかす3くらい
覚えておきたい目安
- 水分:握ると固まり、指でつつくと崩れるくらい(よく「50%くらい」と言われます)
- 温度:材料のまん中で測る。40度前後から50度くらいの間で、説明が分かれます
- 切り返し(混ぜ直し):好気で作るときだけ。温度が上がってきたら、底までしっかり混ぜます
- できあがり:好気なら3週間くらいの例があります。嫌気(乳酸発酵)なら1か月くらい、長い例だと2か月以上
- 保存:よく乾かしてから。半年以上もつという説明と、1年くらいで使い切るという説明があります
- 使う量:1平方メートルに100gくらいの例があります。最初は少なめに
いちばん大事なこと
- 水を入れすぎない
- 好気か嫌気か、最初に決めて、途中で混ぜない
- できたら、よく乾かしてから保存する
作業の手順
ここからは、実際に作る流れを順番に書いていきます。いちばん作られることが多い、空気を入れながら発酵させる「好気」のやり方を中心にしています。嫌気のやり方は、手順のあとにまとめて書きました。
手順1:作る時期を決める
ぼかし肥料は、寒すぎず暑すぎない季節がいちばん作りやすいです。春か秋ですね。
冬でも作れないことはありません。ただ、気温が低いと微生物の動きがにぶくなって、温度が上がり始めるまでに時間がかかります。真夏は逆に、温度が上がりすぎたり、虫が寄ってきたりしやすくなります。
秋に仕込んでおくと、冬のあいだに乾かして保存しておけて、春の植えつけの準備にちょうど間に合います。初めて作るなら、秋か春の、晴れの日が続くころがおすすめです。
手順2:置き場所と入れ物を用意する
好気で作るなら、空気が通る入れ物を使います。たとえば、ふたを少しずらした衣装ケース、通気性のある袋、ブルーシートの上に山にして上から布をかける、といった形です。
置き場所は、雨が当たらず、直射日光も当たらないところ。屋根のある軒下や物置の中がちょうどいいです。米ぬかは虫やネズミにとってもごちそうなので、家のすぐ近くより、少し離れた場所のほうが気楽かもしれません。
量が少ないと温度が上がりにくい、という説明もあります。少量で作るときは、段ボールや古い毛布で囲んで、冷えないようにしてあげると進みやすくなります。ただ、好気のときは空気が必要なので、ぴったり密閉はしないでください。
手順3:材料をそろえる
早見でいくつか配合の例を書きましたが、初めてなら、手に入りやすいもので1つ選べば大丈夫です。
ここでは、家庭で少量作る例でお話しします。
- 米ぬか:3L
- 油かす:1L
- 卵の殻の石灰:100ccくらい
- 培養土(または、病気の出ていない畑の土・赤土・山土):1Lくらい
- 水:様子を見ながら
- 木酢液:入れるなら、ほんの少し
この配合を紹介している方は、おからを少し入れたり、油かすを足したりもしています。ただ、そこの量は話の中で言い直しがあって、はっきりしません。おからは「あれば少し」くらいに考えておけば十分です。
米ぬかは、なるべく新しいものを使います。古くなって、すっぱいにおいや油のにおいが強いものは避けたほうがいいです。
土は、病気が出ていない場所のものを使います。畑で病気が出た場所の土を入れると、ぼかしと一緒にまた畑へ戻すことになってしまいます。心配なら、袋入りの培養土を使えば安心です。
手順4:乾いたまま、よく混ぜる
まず、水を入れる前に、乾いた材料だけをしっかり混ぜます。
米ぬか、油かす、卵の殻、土を広げて、手やスコップで全体がむらなく同じ色になるまで混ぜてください。ここで混ざっていないと、あとで水を入れたときに、ある場所は水っぽく、ある場所は乾いたまま、ということが起きます。
生のおからを使う場合は、だまになりやすいので、ほぐしながら混ぜます。おからのかたまりは、仕込んだあとも混ぜ直すたびにくずしていくと、むらが減ります。
もみ殻くん炭を入れると、黒い粒が全体に散らばるので、混ざり具合が目で見て分かりやすい、という利点もあります。
手順5:水を少しずつ足す
ここがいちばん大事なところです。
水は、一度に全部入れません。少しずつ足して、そのたびによく混ぜます。
米ぬかは油分を含んでいるので、最初は水をはじいて、なかなか吸ってくれません。それで「まだ足りないかな」とどんどん足してしまって、気づいたらべちゃべちゃ…ということがよくあります。少し入れたら、しばらく混ぜて、なじませてから次を足すのがコツです。
生おからを使う場合は、おからが水分を持っているので、追加の水がほとんどいらないこともあります。おからの水分は、豆腐屋さんによっても、日によっても違うので、毎回、手で確かめながら足してください。
手順6:握って、水分をたしかめる
水分のちょうどいい目安は、こうです。
- 材料をひとつかみ握ると、手の中で固まる
- その固まりを指でつつくと、ほろっと崩れる
握っても固まらず、さらさらこぼれるなら、水が足りません。握ったら指のすき間から水がしみ出てくる、固まりがつついても崩れずにべたっとしている、なら水が多すぎます。
よく「水分50%くらい」と言われますが、家庭で水分を正確に測るのは難しいので、この手ざわりで判断して大丈夫です。
迷ったら、少し少なめで止めてください。水が足りない分は、あとから霧吹きで足せます。でも、多すぎた水を抜くのは大変です。乾いた米ぬかや土を足して調整するしかありません。
手順7:木酢液を入れるなら、ほんの少し
木酢液を入れる配合では、量は「ほんの少し」です。少しだと微生物への刺激になる一方、入れすぎると菌を抑える力のほうが強く出てしまう、という注意があります。
入れなくても、ぼかしは作れます。迷うなら入れなくて大丈夫です。
手順8:菌の元を入れる(入れなくても作れる)
ぼかしを発酵させるのは、微生物です。でも、微生物をわざわざ買ってこなくても大丈夫です。米ぬかや空気の中にも、もともと菌はいます。何も足さなくても、条件がそろえば発酵は始まります。
ただ、菌の元を少し入れると、発酵が早く立ち上がりやすくなります。よく使われるのは、次のようなものです。
- 前に作ったぼかし(戻しぼかし):ひとつかみ混ぜると、乾いて休んでいた菌が水分を得て、また動き出します
- 竹やぶや雑木林の、落ち葉の下や朽ちた竹についている白い菌:地元の菌という意味で「土着菌(どちゃくきん)」と呼ばれます
- 納豆を食べたあとの空き容器:ついている納豆菌を使う方法です
土着菌を採ってくるのは、楽しい作業です。竹やぶに入って、朽ちた竹の皮をめくったり、落ち葉を少しどけたりすると、白い綿のようなものがついていることがあります。それをこそぎ落として持ち帰り、材料に混ぜます。
ただ、白いものが全部よい菌だとは、見た目だけでは言い切れません。ここは「採らないと作れない」ものではないので、気が向いたら試す、くらいで考えてください。
手順9:仕込んだら、温度を見る
材料を入れ物に入れたら、上から布やシートをかけておきます。好気なので、ぴったりふたはしません。
数日すると、材料のまん中から温かくなってきます。温度は表面ではなく、まん中に手を差し込むか、温度計を差して測ってください。表面や底は冷えやすいので、まん中がいちばん正直です。
ある仕込みの例では、6日目にまん中が45度くらいになっていました。ただ、これはその時の材料・量・気温での話なので、「6日たったら必ずこうなる」とは考えないでください。冬ならもっとかかりますし、夏ならもっと早いこともあります。
手順10:温度が上がったら、切り返す
温度が上がってきたら、全体を混ぜ直します。これを「切り返し」と言います。
切り返しの目安になる温度は、説明が分かれています。45〜50度くらいになったら混ぜる、という説明もあれば、40度くらいがいちばん菌が増える温度なので上がりすぎないように、という説明もあります(あとで詳しく書きます)。
どちらの説明でも共通しているのは、熱くなりすぎたら混ぜて下げる、ということです。手を入れて「熱っ」と感じるくらいなら、混ぜどきだと思ってください。
混ぜるときは、表面だけでなく、底までしっかりひっくり返します。底のほうは水がたまりやすく、そこだけ腐る方向へ進んでしまうことがあるからです。シートや入れ物の内側に水滴がついていたら、それも全体になじませるように混ぜます。
切り返しのたびに、握って水分も確かめてください。乾きすぎていたら霧吹きで少し足し、湿りすぎていたら乾いた米ぬかを足します。
最初のころは温度がどんどん上がるので、混ぜる間隔は短めに。だんだん上がり方がゆるやかになってきたら、間隔をあけていきます。
手順11:熱が冷めて、さらさらになったら完成
切り返しを続けていると、やがて温度が上がらなくなります。混ぜても温かさを感じなくなって、材料がさらさらしてきたら、できあがりです。
好気のある例では、仕込みからおよそ3週間で、このような状態になっていました。ただ、ここも日数だけで決めないでください。温度・手ざわり・においで判断するのが確実です。
においは、甘いような、みそのような、香ばしいにおいになっていれば順調です。
手順12:広げて乾かす
完成したら、すぐに袋に詰めるのではなく、一度うすく広げて乾かします。
水分が残ったまま保存すると、また発酵が始まったり、腐る方向の菌が増えたりすることがあるからです。シートの上にうすく広げて、日陰や風通しのよい場所で乾かします。ある例では2日くらい干していましたが、量や天気で変わるので、手でさわってしっとり感がなくなるまで、と考えてください。
手順13:保存する
よく乾いたら、袋に入れて保存します。発酵中は空気が必要なので閉じませんでしたが、乾いた完成品は、逆に湿気を吸わないように口を閉じて保存します。工程によって「閉じる・閉じない」が逆になるので、ここは混同しないように気をつけてください。
置き場所は、湿気の少ない、雨の当たらない場所です。米ぬかのにおいで虫やネズミが寄ってくることがあるので、ふたつきの入れ物に入れておくとさらに安心です。
嫌気(けんき)で作る場合
嫌気は、空気を断って発酵させる作り方です。乳酸菌のはたらきで発酵させるので、「乳酸発酵ぼかし」と呼ばれることもあります。
- 材料を混ぜて水分を整えるところまでは、好気と同じです
- 水分の調整に、米のとぎ汁を発酵させた液を使う例もあります
- 混ぜたら、厚手のポリ袋などにぎゅっと詰めて、空気をしっかり抜いて口を閉じます
- あとは、途中で混ぜずに置いておきます。ここが好気と大きく違うところです
- 甘ずっぱい、チーズのようなにおいがしてきたら完成のサインです
- 期間は1か月くらいの例があり、長いと2か月以上置く例もあります
好気は切り返しの手間がかかるかわりに早くでき、嫌気は手間が少ないかわりに時間がかかる、と考えると分かりやすいです。
大事なのは、途中で方式を混ぜないこと。嫌気で仕込んだのに、心配になって袋を開けて混ぜてしまうと、空気が入って、どちらつかずの状態になってしまいます。
同じ材料で、2つの方式を試すこともできる
材料を半分ずつに分けて、片方は好気、片方は嫌気で仕込んでみる、という楽しみ方もあります。同じ材料でも、においや進み方がずいぶん違うので、比べてみると発酵のしくみが体で分かってきます。
畑での使い方
できあがったぼかしの使い方です。
元肥にも、追肥にも使える
ぼかしは、植えつけ前に土に混ぜる「元肥(もとごえ)」にも、育っている途中に足す「追肥(ついひ)」にも使えます。どちらかといえば追肥に向いている、という説明もあります。
発酵がある程度すんでいるので、生の米ぬかや油かすよりも早く効きはじめ、それでいて、じわじわ長く効く、という両方の性質があると言われます。
量は少なめから
ぼかしはよく効きます。だからこそ、最初は少なめに使います。
ある例では、追肥として1平方メートルに100gくらいを使っていました。別の方は、加工した米ぬかの肥料を、同じくらいの量で追肥に使っています。ただ、材料によって肥料の成分はかなり違うので、この数字はあくまで目安です。
まずは少しまいて、葉の色や伸び方を見て、足りなそうなら足す。この順番なら失敗しにくいです。
株元に集めない
追肥するときは、株のすぐ根元ではなく、少し離れたところにまきます。根の先は、株元よりも外側に広がっているので、そのあたりにまいて、軽く土と混ぜるか、上から土を寄せておきます。
株から何cm離すかは、野菜の大きさによって変わります。株元にぎゅっと集めない、というのを覚えておけば大丈夫です。
生の米ぬかとの使い分け
米ぬかは、ぼかしの材料にもなりますし、ほかの使い方もあります。
- ぼかしの材料にする:この記事の使い方。畑の外で発酵させてから使う
- 堆肥づくりのときに少し振る:落ち葉や野菜くずの山に振ると、分解を早めてくれる
- 畑の土に直接混ぜて、土の中で発酵させる:「土ごと発酵」と呼ばれる方法。ただし、植えるまでに期間をあける必要がある
同じ米ぬかでも、使う場所によって役割が変わるんですね。生の米ぬかを畑に直接入れるときの待ち時間は、説明が分かれています(あとで書きます)。
失敗の見分け方
ぼかし作りでよくある失敗と、その見分け方・直し方です。
いつまでたっても温かくならない
- 水が足りない:握っても固まらないなら、霧吹きで少しずつ足して混ぜます
- 気温が低い:冬は立ち上がりに時間がかかります。段ボールや毛布で囲んで保温します
- 量が少なすぎる:少量だと熱がこもりにくいです。保温するか、量を増やします
- 菌のきっかけが少ない:前に作ったぼかしや、土着菌を少し足すと立ち上がりやすくなります
くさい(どぶのような、腐ったにおい)
水が多すぎて、空気が足りず、腐る方向に進んでいる可能性があります。
- 好気なら、すぐに切り返して空気を入れます
- 乾いた米ぬかや土を足して、水分を下げます
- 底に水がたまっていないか見て、底からしっかり混ぜます
発酵がうまく進んでいないと、かなり強いにおいが出ます。甘い・みそっぽい・香ばしい、なら順調。鼻をつく、どぶのような、なら水の入れすぎを疑ってください。
カビが生えた
白いカビが表面や中に広がるのは、発酵が進んでいるサインとして見られることが多いです。
黒っぽいカビや、黒ずんだかたまりが出てきたら、腐る方向に進んでいる注意のサインと言われます。水が多すぎたり、混ぜ足りなかったりした場所に出やすいです。
ただし、カビの色だけで、そのカビが何なのか、安全かどうかを決めることはできません。黒い部分が広がっている、においも悪い、というときは、無理に使わず、畑のすみの堆肥の山に入れてしまうのも1つの手です。
熱くなりすぎた
手を入れていられないほど熱くなったら、すぐに切り返します。熱くなりすぎると、菌が弱ったり、肥料の成分が逃げたりすると言われます。
広げて温度を下げる、混ぜる間隔を短くする、で調整します。
虫がわいた・ネズミが来た
米ぬかは、微生物だけでなく、虫やネズミにとってもごちそうです。保管しているだけでも、小さな虫が寄ってきたり、卵を見つけたりすることがあります。
- 発酵中も、上から布やシートをかけておく
- 材料の米ぬかは、袋のまま放置せず、ふたつきの入れ物に入れる
- 完成品はよく乾かしてから、口を閉じて保存する
完成したと思ったのに、また温かくなった
乾かし方が足りず、水分が残っていると、保存中にまた発酵が始まることがあります。もう一度広げて、しっかり乾かしてください。
説明が分かれていること
ぼかし肥料は、作る人によってやり方がかなり違います。ここでは、説明が分かれているところを並べておきます。どれが正解というより、材料や量、置き場所が違えば、ちょうどいいところも変わる、と考えてください。
切り返しの温度:40度前後か、45〜50度か
- 40度くらいを菌が増える温度と考えて、それより上がりすぎたら乾かして止める、という説明
- まん中が45〜50度くらいになったら混ぜ始める、それに合わせて混ぜる間隔を変えていく、という説明
方式や材料、保温の仕方が違うので、どちらかに統一はできません。家庭で少量作るなら、「手を入れて熱いと感じたら混ぜる」で十分です。
菌は買う必要があるか
- 何も足さなくても、材料や空気の中の菌で発酵は進む。菌の元を足すのは、立ち上がりを早めるため、という説明
- 嫌気で作るなら、乳酸菌などの資材を使う、という説明もあります
- 一方で、米のとぎ汁を発酵させた液を使って、買わずに嫌気で作っている例もあります
方式ごとに話がまざりやすいところです。少なくとも好気なら、買わなくても作れます。
保存期間:半年以上か、1年くらいか
- 湿気の来ない場所に置けば、半年以上もつ、という説明
- 1年くらいを目安に使い切る、という説明
材料、乾かし方、入れ物が違うので、同じ期限にはまとめられません。どちらにしても「よく乾かして、湿らせない」が前提です。
生の米ぬかを畑に入れてから、植えるまでの日数
ぼかしではなく、生の米ぬかを直接畑に入れた場合の話です。
- 10日〜2週間くらいあければよい、という説明
- 少なくとも1か月くらいあける、という説明
- 最低でも3か月くらいあける、という説明
ずいぶん幅がありますよね。入れる量、土の温度、混ぜ方で、分解にかかる時間が変わるためだと考えられます。量を多く入れるときや、気温が低い時期ほど、長めにあけておくと安心です。
この待ち時間が気になる方こそ、ぼかしにしてから使う意味があります。畑の外で発酵をすませておけば、こうした待ち時間を気にしなくてよくなるからです。
できあがりまでの日数
- 好気:およそ3週間の例
- 嫌気(乳酸発酵):およそ1か月の例
- 密閉して2か月以上置く例
同じ「発酵」でも、方式によって完成のサインも違います。好気は「熱が冷めて、さらさら、みそのようなにおい」。嫌気は「甘ずっぱい、チーズのようなにおい」。好気の完成サインで嫌気を判断したり、その逆をしたりしないようにしてください。
追肥の量
- 1平方メートルに100gくらいの例
- 加工した米ぬか肥料で、90〜100gくらいの例
数字は近いですが、使っている資材が違うので、同じ推奨量だと考えないでください。どちらも「最初は少なめに、ようすを見て」が共通しています。
よくある質問
Q. 冬に作ってもいいですか?
A. 作れます。ただ、気温が低いと微生物の動きがにぶくなるので、温度が上がり始めるまでに時間がかかります。段ボールや古い毛布で囲んで保温したり、日中だけ日の当たる軒下に置いたりすると進みやすくなります。急がないなら、春まで待つのも1つの考え方です。
Q. 発酵中は、毎日見に行かないといけませんか?
A. 好気で作るなら、温度が上がってくる最初のころは、できれば毎日のぞいてください。熱くなりすぎていないか、くさくなっていないかを確かめるだけでも十分です。温度の上がり方が落ち着いてきたら、数日おきでも大丈夫です。嫌気なら、閉じたまま置いておくので、ほとんど手はかかりません。
Q. 米ぬかだけで作れますか?
A. 作れます。米ぬかに水を加えて、菌の元を少し入れるだけでも発酵は進みます。納豆の空き容器を使って、米ぬかと水だけで少量作る例もあります。油かすや魚粉を足すと、肥料としての力が強くなります。
Q. 油かすがないと、だめですか?
A. なくても作れます。たんぱく質の多い材料として、魚粉やおからでも代わりになります。どれもない場合は、米ぬか中心のぼかしとして作れば大丈夫です。
Q. 土は入れたほうがいいですか?
A. どちらでも作れます。土を入れると、全体が薄まって、においや成分が逃げるのをおさえる、という説明があります。入れるなら、病気が出ていない場所の土か、袋入りの培養土を使ってください。
Q. もみ殻くん炭は必要ですか?
A. 必須ではありません。入れると、混ざり具合が見えやすくなったり、土の改良に役立つと考えて入れる人がいます。なくても作れます。
Q. 生のもみ殻で、もみ殻くん炭の代わりになりますか?
A. 同じものとは考えないほうがいいです。もみ殻くん炭は、もみ殻を焼いて炭にしたもので、性質が違います。
Q. 雨の日に作業しても大丈夫ですか?
A. 仕込みの作業は屋根の下なら大丈夫です。ただ、完成後に広げて乾かす作業は、晴れの日にしたほうが早く乾きます。
Q. 発酵中に雨が入ってしまいました
A. 握ってみて、水っぽくなっていたら、乾いた米ぬかや土を足して、すぐに切り返してください。においが悪くなっていないかも確かめます。
Q. ベランダでも作れますか?
A. 少量なら作れます。ただ、発酵中はにおいが出ますし、虫も寄ってきやすいので、ご近所との距離や風向きには気をつけてください。嫌気で、袋を閉じて作るほうが、においは外に出にくいです。
Q. 完成したぼかしは、どの野菜にも使えますか?
A. 多くの野菜に使えます。ただ、葉ばかり茂ってしまう野菜や、肥料を控えめにしたほうがいい野菜もあるので、量はそれぞれの野菜に合わせて少なめから使ってください。
Q. ぼかしを使ったら、虫が増えた気がします
A. まいたぼかしが土の表面に出たままだと、虫が寄ってくることがあります。まいたら軽く土と混ぜるか、上から土をかけておくと寄ってきにくくなります。
Q. 去年作ったぼかしが残っています
A. 乾いた状態で、湿っていなければ、使えることが多いです。においを確かめて、かびくさい・湿っている、なら新しい仕込みの材料に「戻しぼかし」として少し混ぜて使う、という手もあります。
Q. 市販のぼかし肥料と、自分で作るのは何が違いますか?
A. 市販品は、成分がそろっていて、すぐ使える手軽さがあります。自分で作ると、材料を選べて、手元の米ぬかなどを生かせます。どちらが正解ということはないので、まずは市販品で使い方に慣れてから、自分で作ってみるのもいいと思います。
学ぶ🔬 なぜ「発酵させてから」使うのか
ここからは、ぼかし肥料のしくみについて、少しだけ深く書いておきます。読み飛ばしても大丈夫です。
生の有機物を土に入れると、何が起きるか
米ぬかや油かすのような生の有機物を、そのまま土に混ぜると、土の中の微生物が一気にそれを食べ始めます。
このとき、いくつかのことが起きます。
- 微生物が増えるために、土の中の窒素を使う。そのため、野菜が使える窒素が一時的に減ることがある
- 分解のときにガスが出る
- 分解のときに熱が出る
- においにつられて、虫が寄ってくる
植えたばかりの苗や、まいたばかりの種のすぐ近くでこれが起きると、根が弱ったり、芽がうまく出なかったりすることがあります。生の米ぬかを入れたあと、植えるまでに期間をあけるように言われるのは、このためです。
ぼかしは、それを畑の外ですませておく
ぼかし肥料は、この「分解の最初のにぎやかな時期」を、畑の外ですませておくものです。
発酵の中で、米ぬかに含まれるでんぷんなどは糖に、魚粉やおからに含まれるたんぱく質はアミノ酸に、と少しずつ分解されていく、という説明があります。分解がある程度進んでいるので、畑に入れたあと、根が吸いやすい形になるまでが早い。それでいて、まだ分解しきっていない部分が残っているので、ゆっくり長く効く。ぼかしが「早く効いて、長く効く」と言われるのは、このためです。
ただ、ぼかしを使えば、どんな問題も起きなくなる、というわけではありません。まきすぎれば、やはり濃すぎて根をいためることがあります。だからこそ、少なめから使うのが大事なんですね。
乾かすと、菌は「眠る」
完成したぼかしを乾かすと、発酵は止まります。でも、菌が全部いなくなったわけではありません。水分がなくなって、休んでいる状態です。
だから、畑にまいて土の水分にふれると、また動き出します。新しい仕込みに前のぼかしを混ぜる「戻しぼかし」で発酵が早まるのも、休んでいた菌が水分をもらって目を覚ますからです。
逆に言えば、保存中に湿気を吸うと、袋の中で菌が動き出してしまいます。保存のときに乾燥が大事なのは、このためです。
量が少ないと温度が上がりにくい理由
発酵で出る熱は、材料の量が多いほどたまりやすくなります。山が大きいと、まん中で出た熱が外へ逃げにくいからです。逆に、少しだけ作ると、出た熱がすぐに外へ逃げてしまって、温度が上がりきりません。
農家さんが大きな山で作るときと、家庭でバケツ1杯ぶん作るときで、同じ日数・同じ温度にならないのはこのためです。少量で作るときは、温度計の数字にこだわりすぎず、手ざわりとにおいで進み具合を見てあげてください。
「ぼかし」という名前
「ぼかし」という名前には、いくつかの説明があります。
- 肥料の強い効き目を、発酵させることでやわらげる(ぼかす)から
- 土などを混ぜて、肥料の成分を薄める(ぼかす)から
どちらが本当の由来かは決まっていません。どちらの説明も、「強すぎるものを、ちょうどよくする」という意味では共通しているのが面白いところです。
好気と嫌気で、はたらく菌が違う
好気で作るときは、空気の中の酸素を使って活動する菌が中心になります。こうじかびのなかまや、納豆菌のなかまなどですね。酸素を使って活発に分解するので、熱が出て、温度が上がります。だから切り返しが必要になります。
嫌気で作るときは、酸素がない状態で活動する菌が中心です。乳酸菌が代表的です。乳酸菌は、まわりを酸っぱくすることで、ほかの腐る方向の菌が増えにくい環境を作ります。熱はあまり出ないので、切り返しはいりません。
同じ「ぼかし」でも、中でおきていることが違う。だから、途中の手入れも、完成のサインも違うわけです。
なぜ水分が「多すぎ」だと失敗するのか
水が多すぎると、材料のすき間が水でふさがって、空気が入りません。好気で作っているつもりでも、中は酸素の少ない状態になって、乳酸菌のようによい方向に働く菌ではなく、腐る方向の菌が増えやすくなります。どぶのようなにおいが出るのは、このためです。
水が少なすぎる場合は、菌が動けないだけで、腐ることはあまりありません。水を足せば、また進み始めます。「迷ったら少なめ」と言われるのは、取り返しがつくかどうかの違いなんですね。
まとめ
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
ぼかし肥料の作り方のポイントを、もう一度まとめておきます。
- ぼかしは、生の有機物の分解を、畑の外ですませておく肥料
- 材料は米ぬかが中心。たんぱく質の材料(油かす・魚粉・おから)と、薄める土を合わせる
- 水は少しずつ。「握って固まり、つつくと崩れる」が目安。迷ったら少なめ
- 好気は切り返しが必要、嫌気は閉じたまま混ぜない。途中で方式を変えない
- 温度はまん中で測る。熱いと感じたら切り返す
- 完成は日数より「熱が冷めて、さらさら、いやなにおいがしない」で判断
- よく乾かしてから、湿気を避けて保存する
- 使うときは少なめから。株元に集めず、まいたら土をかける
最初は、量を少なめにして、1回作ってみるのがいちばんです。発酵のにおいや温かさを一度体で感じると、2回目からはぐっと楽になりますよ。
秋のうちに仕込んでおけば、春の畑づくりに使えます。米ぬかが手に入ったら、ぜひ試してみてください🌾
米ぬか
微生物のごちそうです。ぼかし肥料の主材料になります。
発酵油かす
窒素の供給源。米ぬかと合わせて発酵させます。
貝殻石灰
アルカリがきつくなく、カルシウムとミネラルを補えます。
くん炭(もみ殻)
通気性と肥料もちをよくします。仕上がりが扱いやすくなります。