朝どりは甘くない🥬 同じほうれん草で糖度が2倍変わる話
🗨️「せっかく育てたのに、なんだか味がぼんやりする」
🗨️「朝どり野菜がいちばんおいしいんでしょ?」
🗨️「冬の野菜が甘いのは知ってるけど、なぜ?」
どうも、8150(えいこう)です🌱 家庭菜園歴8年、理科の教員免許を持っていて、有機・無農薬で野菜を育てています。
今回は、収穫の話です。
先に、この記事でいちばん言いたいことを言っておきますね。
朝どりのほうれん草は、甘くありません。
これ、私も長いこと逆に思っていました。朝どりこそが最高だと。スーパーでも「朝採れ」と大きく書いてありますよね。
でも実際に測ってみると、こうなります。
- 朝8時に穫ったほうれん草 … 糖度6度
- 前日の夕方4時に穫ったほうれん草 … 糖度12〜13度
同じうね、同じ品種、同じ日に育った株です。それで倍違う。
12〜13度というのは、「甘いね」と言われるトマトと同じくらいの数字です。ほうれん草がトマトの甘さになる。穫る時間を変えるだけで。
今日は、この話をします☺️
📖 この記事の目次
なぜ、朝は甘くないのか
野菜は、光合成で糖を作ります。ここまではご存じのとおりだと思います。
問題は、作った糖がどこにあるか、です。
糖は、夜のうちに引っ越します
野菜の1日は、こうなっています。
- 朝、太陽が出る → 光合成が始まる
- 日中ずっと、葉に糖がたまっていく
- 夕方、葉は糖でいっぱいになる
- 夜のあいだに、その糖が茎や根へ運ばれていく
- 朝、葉は空っぽになっている
この「夜のうちに運ぶ」動きを、転流(てんりゅう)といいます。
つまり朝どりの野菜は、糖を運び終わったあとの葉なんです。だから甘くない。
なぜ、わざわざ夜に運ぶのか
これ、私は聞いたとき「うまくできているな」と思いました。
昼のあいだ、葉は光合成という工場の仕事で忙しい。そこに製品(糖)を置きっぱなしにしておくと、工場が詰まって効率が落ちます。
だから夜のうちに、倉庫へ移す。倉庫というのが、茎と根なんですね。
夜は光合成ができないので、運搬に専念できる。工場と倉庫、昼と夜で役割を分けているわけです。
だから、朝の野菜は「シャキッ」なんです
ここまで読むと「じゃあ朝どりは意味がないのか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。
朝の野菜には、朝の良さがあります。
- 水分がたっぷりで、シャキッとしている
- そのかわり糖が少ない
- そして、えぐみがやや強い
日が当たって光合成が進むと、体内の水分は少しずつ失われていきます。だから夕方の野菜は、朝ほどパリッとはしていません。
つまり、こういうトレードオフです。
朝 = みずみずしいが、甘くない。夕方 = 甘いが、みずみずしさは落ちる。
どちらが正解ということではなく、何を食べたいかで決める話なんですね。
じゃあ、いつ穫ればいいのか
野菜ごとに、答えが変わります。
葉物は、夕方
ほうれん草・小松菜・春菊・水菜。このあたりは、迷わず夕方です。
葉物は、葉そのものを食べる野菜です。つまり工場をそのまま食べている。だったら、糖がたまりきっている夕方に穫るのが理にかなっています。
夕方に穫ったほうれん草のおひたしは、本当に別物になります。私はこれを知ってから、夕方の畑に出るようになりました。夕暮れの畑って、けっこういいものですよ。
きゅうり・トマトなどの実は、朝
きゅうりは、みずみずしさが命の野菜です。あのパリッとした歯ごたえが落ちたら、きゅうりである意味が半分なくなります。
なので、実を食べる野菜は朝に穫ってください。
ただしトマトは例外があります。甘さを狙うなら、夕方に穫るという選択肢もあり。生でかじるなら朝、料理に使うなら夕方、くらいで考えていいと思います。
根菜は、あまり気にしなくていい
大根・にんじん・じゃがいも。このあたりは、穫ってすぐ食べるものではありませんよね。
数日から1週間くらい保存してから使うことが多いので、収穫時刻の差はほとんど関係ありません。都合のいいときに穫ってください。
ひとつだけ。若いにんじんをサラダで生のまま食べるなら、夕方に穫ったほうが甘いです。生で食べるときだけは、時間を意識する価値があります。
糖度計は、数千円で買えます
ここまで数字の話をしてきましたが、これはご自分で測れます。
屈折式の糖度計という道具があって、数千円で手に入ります。使い方はとても簡単です。
- 葉をよく揉んで、汁を絞り出す
- その汁をレンズに数滴たらす
- カバーをして、覗く
これだけ。光が糖度によって曲がり方を変えるので、数字が見えるという仕組みです。
これ、お子さんと一緒にやると本当に盛り上がります。詳しくは最後の理科パートでお話ししますね。
寒さで甘くなるのは、凍らないためです
もうひとつの「甘くなる」の話をします。冬の野菜が甘いのは、なぜでしょうか。
答えは、凍らないためです。
野菜は、自分で不凍液を作ります
寒さに当たると、野菜は体の中でこういうことをします。
細胞にためこんでいたデンプンを、糖に変える。
砂糖水は、ただの水より凍りにくいですよね。同じことです。細胞の中の糖の濃度を上げると、その細胞は凍りにくくなる。
つまり冬の野菜は、生き延びるために自分で不凍液を作っている。そして人間は、それを「甘い」と言って食べているわけです。
なんだか申し訳ないような、でもよくできているなと思う話です。
だから、小さくてゆっくり育った株ほど甘い
ここから、面白い結論が出ます。
ゆっくり育って、小さく締まった株ほど、糖の濃度が高い。
逆に、肥料と水でぐんぐん大きくした株は、水っぽくて糖が薄い。だから凍りやすいし、味もぼやけます。
「大きく育ったほうがいい」という感覚は、冬の野菜については当てはまらないんですね。むしろ、こぶりでずんぐりした株のほうが当たりです。
冬にスナップエンドウが小さい株のほうが強いのも、同じ理屈です。糖が濃いから凍りにくい。生き延びる力と、おいしさが同じものだというのは、なかなか味わい深い話だと思います。
★寒締め ー 穫る1週間前に、わざと寒さに当てる
このしくみを、こちらから使ってやる方法があります。寒締め(かんじめ)といいます。
やり方は、拍子抜けするほど簡単です。
収穫の1週間前に、トンネルや不織布を外す。
それだけ。あとは寒さが仕事をしてくれます。
なぜ効くのか
トンネルの中は暖かいので、野菜は「凍る心配はない」と判断しています。だから糖をためこむ必要がない。
そこで、穫る直前にトンネルを外す。すると野菜は急に寒さにさらされて、あわてて糖をためこみます。
こちらとしては、そのタイミングで穫ればいい。ちょっとずるいですが、これが寒締めです。
どの野菜で効くか
- ほうれん草 … いちばん有名で、いちばん差が出ます。まずはこれで試してください
- 小松菜・春菊 … しっかり効きます
- からし菜(わさび菜) … ★暖かい時期だと「辛いだけ」ですが、寒さに当たると辛味の中に甘みが乗ります
外すのは1週間前くらいから。あまり早く外すと、寒さで傷んでしまうので、そこは天気を見ながら加減してください。
ちなみに、それでも守るものはあります
寒締めは葉物の話です。玉ねぎやスナップエンドウの防寒は、外さないでください。
あちらは「甘くする」ではなく「生き延びさせる」段階なので、目的が違います。混同しないようにしてくださいね。
穫りどきを逃すと、甘さは消えます
せっかく甘くなっても、穫るのが遅れると台無しになる野菜があります。ここは覚えておいてください。
大根 ー 冬を越すとスが入ります
大根を畑に置きっぱなしにすると、中にスが入ります。スというのは、内部に細かい空洞ができて、水分が抜けてスカスカになる状態のことです。
こうなると、味が落ちます。
- 年内どりの大根 … 11月〜12月初旬がベスト
- 春どりの大根 … ★春は成長が早いので、遅れると一気に辛く硬くなります
玉レタス ー 固く巻いたら、すぐ
固く結球したら、待たないでください。遅れると軟腐病(なんぷびょう/株元から溶けるように腐る病気)が出たり、アブラムシが増えたりします。
里芋・さつまいも ー 霜が降りる前に
これは期限のあるタイプです。★霜に当たると傷んで、腐ってきます。
初霜の予報が出たら、その前に掘る。ここだけは天気予報とにらめっこしてください。
ブロッコリー ー 花が咲く直前
ブロッコリーとして食べているあの緑のかたまりは、つぼみの集まりです。
だから収穫が遅れると、黄色い花が咲きます。咲いてしまうと硬くて食べられません。
つまりブロッコリーの収穫は、花が咲く直前の一瞬を狙う作業なんですね。粒がふくらんできて、まだ黄色が見えないうち。そこです。
茎ブロッコリーの脇芽は、★真冬は大きくならないので、小さいうちに穫ってください。待っても大きくなりません。
穫り方でも、味は変わります
最後に、穫り方の話を少しだけ。
葉物は、抜かずに摘む
株ごと抜かずに、外側の葉から摘んでいく。真ん中の芯を残しておけば、そこからまた伸びてきます。
1株から3回くらい穫れます。しかも、そのつど新しい葉が食べられる。
白菜は、縛って畑に置く
収穫せずに、外葉で全体を包んで紐で縛る。こうすると畑が冷蔵庫がわりになって、2月ごろまで置いておけます。
必要なときに1個ずつ穫る。これが白菜のいちばん贅沢な食べ方だと思っています。
にんじんは、土をかけて畑で保存
12月に土をかけておくと、3月上旬まで畑で持ちます。
寒さに当たり続けるので、置いておくほど甘くなります。これは寒締めの延長ですね。
葉は「下」を持つ
にんじんや大根を抜くとき、葉の先のほうを持って引っ張ると、途中でちぎれます。
葉の根元、株にいちばん近いところを持って、まっすぐ上に引く。これだけで失敗が減ります。
学ぶ:工場を食べるか、倉庫を食べるか🔬
理科の時間です。ここまでの話が、ひとつにつながります。
野菜を「工場」と「倉庫」で分けてみてください。
- 葉 … 光合成をする工場
- 茎・根 … 糖をためる倉庫
この分け方をすると、いろいろなことが説明できます。
なぜ根菜は甘いのか
大根、にんじん、さつまいも。根菜が甘いのは偶然ではありません。
倉庫そのものを食べているからです。
葉が一日じゅう働いて作った糖が、毎晩そこへ運び込まれる。それを何か月も続けた結果が、あの太った根です。人間はその貯金を横取りしているわけですね。
さつまいもが特別に甘いのも、これで説明がつきます。あれは究極の倉庫なんです。
なぜ葉物だけ、時間で味が変わるのか
工場は、中身が一日で入れ替わります。朝は空っぽ、夕方は満杯。だから穫る時間で味が変わる。
倉庫は、何か月もかけて少しずつ貯まっていきます。一日ぶんの出入りなんて誤差です。だから時間で変わらない。
葉物は夕方、根菜はいつでもいい。この使い分けの理由が、ここにあります。
お子さんと一緒なら、これをやってください
自由研究として、これ以上のものはないと思います。
用意するもの … 屈折式の糖度計(数千円)
- 同じうねのほうれん草を、朝8時に1株、夕方4時に1株、収穫する
- それぞれ葉をよく揉んで、汁を絞る
- 糖度計で測る
朝は6度、夕方は12度前後。目の前で、はっきり倍の差が出ます。
「同じ畑の、同じ野菜なのに、なぜ?」から始めて、光合成と転流の話まで持っていける。しかも結論が「じゃあ今日は夕方に穫ろう」という行動につながる。
理科が、そのまま晩ごはんになるんです。こういう学びが、いちばん残ると思っています🥬
まとめ
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
甘さは、育て方だけでなく穫り方でも決まります。ポイントを整理しておきますね。
- ★葉物は夕方に穫る。朝は糖度6度、夕方は12〜13度。糖は夜のうちに根へ運ばれる(転流)
- きゅうりなど実ものは朝。みずみずしさが命。根菜は時間を気にしなくていい
- 寒さで甘くなるのは、凍らないために糖をためる不凍液のしくみ。★小さくゆっくり育った株ほど甘い
- ★寒締め ー 穫る1週間前にトンネルを外す。ほうれん草でいちばん差が出ます
- 穫りどきを逃さない。大根はスが入る、玉レタスは軟腐病、里芋は霜の前、ブロッコリーは花が咲く直前
- 葉物は抜かずに摘む。白菜は縛って畑に置く。にんじんは土をかけて3月まで
全部やろうとしなくて大丈夫です。今日の夕方、ほうれん草を1株だけ穫ってみてください。いつも朝に穫っている方なら、その違いにきっと驚きます。道具も要りません。時間を変えるだけです🥬
次回は、いよいよ来年の話。今年の畑を振り返って、来年の作付けを決める方法をお話しします🗺️
屈折式糖度計(Brix 0〜32%)
この記事の主役です。朝と夕方のほうれん草を測ると、6度と12度がその場で出ます。葉を揉んで、汁をたらして、覗くだけ。お子さんの自由研究にも、これ以上ないと思います。
不織布
寒締めは「収穫の1週間前に外す」作業なので、まずかけておくものが要ります。かけっぱなしにできるので、外すタイミングだけ考えればよくなります。
剪定バサミ(収穫用)
葉物を抜かずに摘むとき、外葉をきれいに切れると株が傷みません。切り口がつぶれると、そこから傷みが入ります。


